奈良公園に高級ホテル 宿泊施設足りず…県が苦肉の策

朝日新聞 2017年1月21日

観光客が泊まれる施設の不足に悩む奈良県が、国の名勝・奈良公園に高級ホテルを誘致する事業に乗り出した。開発が制限されている「一等地」を都市公園に編入し、建設を可能にする窮余の策で、東京五輪前の開業を目指すが、一部の住民は「閑静な環境が壊される」と反発している。

奈良県は全国有数の観光地でありながら宿泊施設の客室数が全国で最も少ない。外国人観光客が増える一方、大阪や京都に近いため通過する客が多く、2015年の延べ宿泊者数は255万人で全国ワースト2。観光資源を活用するには滞在できる環境の整備が課題だった。

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計画地はほとんどが以前からの県有地。原則的に開発できない市街化調整区域にあり、十分に活用されていなかった。このため、宿泊施設の建設が認められている都市公園法に基づく「県立都市公園 奈良公園」に編入して建設を可能にする。一部はすでに編入。残りの民有地の購入などを進め、3月ごろには手続きが完了するという。

東大寺に隣接する計画地の奈良市登大路町(約3・1ヘクタール)には知事公舎があり、昭和天皇が1951年、サンフランシスコ講和条約などの批准書に署名した「御認証の間」が残る。大正期ごろに建てられた庭園の茶室もある。また、春日大社境内の南側に位置する同市高畑町の計画地(約1・3ヘクタール)は閑静な住宅地の一角で、志賀直哉らも訪れた実業家の邸宅があった場所だ。

県はこれらの施設などを生かせる事業者を公募し、飲食施設の整備や平均客室面積50平方メートル以上などの条件をつけて土地と建物を貸す。プロポーザルへの参加受け付けは1地区が23、24日、もう1地区が30、31日で、3~4月に優先交渉権者を決める。

文化財保護法の規定で、現状の変更には文化庁の許可が必要。古都保存法の歴史的風土特別保存地区や奈良市風致地区条例の第1種風致地区の規制もあり、建物は高さ8メートル以下、屋根や壁の材料も制限される。事業者はこうした条件をクリアする必要がある。

この計画に対し、反対する動きもある。高畑町の周辺住民は「奈良公園の環境を守る会」を結成。中止や見直しを求める2237人分の署名と、5137人分のオンライン署名を知事に提出した。辰野勇代表(アウトドア用品会社「モンベル」会長)は「厳しい規制で建造物はつくれないはずなのに、ルールをねじ曲げて建設しようとしている」と批判する。

荒井正吾知事は「公園の環境や景観を守るにはレベルの高いホテルがふさわしい」と、周辺環境に合う事業者を選ぶ考え。「奈良のグレードを上げるのが公の仕事であり、ホテルはひとつの形。世界に誇れる奈良公園の一角にもかかわらず放っておかれた場所でもあり、県民のために生かしたい」と話している。

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