
▲花菱文が整然と施されている「白葛箱」
産経2016.10.26
奈良国立博物館(奈良市)で開催されている「第68回正倉院展」。ペルシャ風水差し「漆胡瓶(しっこへい)」をはじめ、屏風(びょうぶ)や大幡(だいばん)(大型の旗)など華麗な宝物に目を奪われがちだが、植物で編まれた箱など一見“脇役”のような品々に目を向けるのもいいかもしれない。
ガラスの向こうに植物で編まれた楕円(だえん)形の素朴な容器が展示されている。「藺箱(いばこ)」という名だが、植物の種類は特定されていないという。一見すると民芸品のようで異色に思えるが、れっきとした宝物だ。
「白葛箱(しろかずらのはこ)」は同種のものの調査からアケビが使われているとみられ、横長の花菱文が各所に整然と施されていて、美しい。「柳箱」は円形で、革帯が納められていたという。蓋(ふた)、身ともに柳とみられる細枝を絹糸で編んで、縁にエゴノキの薄板をめぐらせ、蓋には菱文を編み出している。
一方、「●(=木へんに便)楠箱(べんなんのはこ)」は仏にささげる品を納めたという献物箱。●(=木へんに便)楠はクスノキの根元や土中根から得た素材をいい、箱表面の木目が目を引く。「銀平脱箱中蓋(ぎんへいだつのはこのなかぶた)」(箱の懸子(かけご))は、各辺が波形となっている浅い容器。同館の清水健・工芸考古室長は図録で、「唐櫛笥(からくしげ)(櫛などを入れる台のある箱)のような調度品の一部が遺ったものかと想像される」と記していて、興味深い。
こうしたさまざまな箱からは当時の職人の丁寧な仕事ぶりが伝わってくる。
正倉院展は64件が出展され、11月7日まで。一般1100円、高校・大学生700円、小・中学生400円。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)。
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