結束し発信力高める 薬師寺、唐招提寺、東大寺 新トップに聞く

2016/9/25 日本経済新聞

東大寺、唐招提寺、薬師寺という奈良を代表する3カ寺で、今年に入ってトップが相次ぎ交代した。この3カ寺に興福寺、西大寺、法隆寺を加えた六大寺で構成する組織「南都隣山会」は、トップ6人中5人が戦後生まれの世代に交代する。メンバーの若返りは組織に変化をもたらすのか。

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(東大寺の狹川普文別当)

「戦後生まれが大勢を占めるようになったからといって、隣山会が端的に変わるようなことはない」とみるのは5月に就任した東大寺の狹川普文(さがわふもん)別当(65)だ。

変化を期待する向きにとっては冷水を浴びせるようだが、狹川別当はこう説明する。

「そもそも南都仏教の寺はいくつもの学部が共存する総合大学のような存在。『八宗兼学』といい、仏教を多面的に修めようとする長い伝統がある」

いまでこそ法隆寺が聖徳宗の総本山、東大寺が華厳宗の大本山、興福寺と薬師寺が法相宗の大本山(管長は3年置きに両寺トップが交代で務める)、唐招提寺が律宗の総本山、西大寺が真言律宗の総本山を掲げているが、これらは明治以来の宗教政策に応じたもの。いずれも一つの教義に固執するのでなく「よその宗派との壁を低くし、互いに認め合う価値観を共有するのが隣山会の特徴」と説く。

距離を適度に保ち、過度な拘束を避けてきた。この共存意識こそ連帯の源といえる。

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(唐招提寺の西山明彦長老)

4月に就任した唐招提寺の西山明彦(みょうげん)長老(65)、8月に就任した薬師寺の村上太胤(たいいん)管主(69)もおおむね狹川別当と同意見だ。

「例えば奈良仏教に大きな足跡を残した鎌倉時代の僧、忍性(にんしょう)が来年生誕800年を迎える。法要を営むとすれば、六大寺はその時どんな役割分担をするか。2カ月に一度顔を合わせ問題意識を共有することが有意義」(西山長老)。「奈良の寺はもともと末寺や檀家の組織が小さいか、無いに等しい。単独寺院が行動しても注目されにくいが、結束すれば発信力が高まるだろう」(村上管主)

個別の抱負や課題もある。

「前任の筒井寛昭長老が別当時代に始めた夏休みの子供向け寺子屋は、東大寺の行事として根付かせたい。また東大寺別当経験者の長老が7人いる。それぞれ別当時代に手がけた印象に残る大仕事を公開で対談してもらう事業も鋭意進めたい」と狹川別当。

「途絶えている伝統行事を復興したい」というのは唐招提寺の西山長老。「第2次大戦で僧侶の数が激減したことにより、営めなくなった法要がいくつもある。一番戻したいのは『布薩(ふさつ)』だ」。月に2回、僧侶が集まって戒本をとなえ、互いに罪や過ちを懺悔(さんげ)し合う。

「文字テキストは残っている。ただ、どんな節付けや抑揚でとなえていたのか。調べて復興させたい。唐招提寺は戒律を授けるために来日した鑑真和上が開いた。寺の勢力が衰え、危機に直面するたびに戒律復興を繰り返してきた歴史がある。布薩を復活するのはせめてもの願い」と語る。

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(薬師寺の村上太胤管主)

一方、「次世代育成が差し迫った課題」と語るのは薬師寺の村上管主。高田好胤(こういん)管主の時代から進めてきた写経勧進による白鳳伽藍(はくほうがらん)の復興も、回廊の整備を残して主要な堂塔はほぼめどが付いた。薬師寺名物となった修学旅行生ら参拝客にユーモラスな解説をする僧侶らも中堅層に育った。

「気がつくと、寺に10~20代の若手僧侶がいない。このままでは寺の継続にも影響が出かねない。打開策として、例えば被災地で身寄りの無い少年らを迎え、薬師寺で修行しつつ学校に通わせるような制度ができないか。また中国の寺から留学生を受け入れるといった交流を探りたい」

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